深夜ファミレス記録

もう深夜にファミレスにも行かなくなってしまったけど、上野か新宿で夜中まで飲んだあとに勢いで書く日記。

幾度も読み返している小説 「スカイ・クロラ」シリーズ

僕は中学生の頃に初めてスカイ・クロラを読みました。森博嗣の作品に触れるのはこれが初めての事だったけれど、その文体、徹底した一人称視点、散りばめられた謎、魅力的な登場人物、淡々としながらも生きることについて考察し続ける内容……全てにノックアウトされた(今思えば、この文体はライトノベルの一種とも言えるような性質を持っているとも考えられますが)。

それ以来僕は現在22歳に至るまで、 少なくとも年に一回はシリーズを一気に読む習慣がつきました。

 

今更僕が解説しなくとも、ネット上にはスカイ・クロラシリーズについての詳細な説明、そして物語についての考察がたくさんある。でもこのシリーズへの思い入れをやはり一度ぶちまけておきたいのでここに書いておきます。別に新しい見方とか持ってるわけではありません。途中からネタバレするかも。

 

ちなみに映画版を監督したのは押井守、その影響で攻殻機動隊シリーズにものめりこむことに。

yksn25.hatenablog.com

 

スカイ・クロラシリーズとは?

シリーズは全6巻、刊行順に並べると

 

スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

 

 

 

ナ・バ・テア (中公文庫)

ナ・バ・テア (中公文庫)

 

 

 

ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)

ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)

 

 

 

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

 

 

 

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

 

 

 

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

 

 となる。

 

ちなみにこのシリーズは装丁がとても美しいです。上に挙げたのは文庫本のシリーズで、それぞれ単色を大胆に使ったデザイン(僕はこちらが好きなのだけど)。単行本も壮大な空の写真にタイトルが刻まれたデザインは本当に素晴らしいとしか言いようがない。

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

 

 これが単行本。

 

時系列

ここからネタバレあり。

実は上記の刊行順は、作中の時系列順ではありません。時系列順には、

2ナ・バ・テア→3ダウン・ツ・ヘヴン→4フラッタ・リンツ・ライフ→5クレイドゥ・ザ・スカイ→1スカイ・クロラ→6スカイ・イクリプスとなります。

スカイ・イクリプスはシリーズの補完として書かれた短篇集であり、それぞれの短編がいろんな時系列なのでちょっとアレだけれども。

 

主人公は誰だ?

前にも書いたとおり、このシリーズは主人公である「僕」の徹底した一人称視点が特徴。しかも、主人公となるキルドレ(年を取らないパイロット達)は地上の世界に興味を持たないため、世界で何が起こっているのかが文中で説明されることは殆ど無い。

会話など、断片的な情報を拾いながら、まずそれぞれの作品の主人公が誰で、時代がいつで、何が起こっているのかを考えなければなりません。そしてそうした推理が可能なくらい、スカイ・クロラの世界は緻密に構築されています。無駄がない。

ちなみにそれぞれの内容から確定できる各主人公は、

ナ・バ・テア、ダウン→草薙水素

フラッタ→栗田

クレイドゥ→?

スカイ・クロラ→函南

となります。

 

クレイドゥでは、最後まで主人公が誰なのかは明かされません。候補となるのは、栗田か草薙。けれど、作中で「キルドレに戻る」「ブーメラン」などの表現がされていることから、「僕」は草薙でほぼ間違いないと思います。冒頭が栗田と思わせるミスリードになっているけど、栗田が主人公だとすると全く筋がわからなくなってしまう。

基本的に、僕はこのシリーズを以下のブログと同様に解釈しています。

Croak Crawler's Chronicle

と思って久しぶりにこのブログにアクセスしたら、新たな解釈が追加されていた。

僕は「再考」と書かれていない方の考察に同意しています。

 

ていうか、この「再考」、いや~それはどうなんだろう?スカイ・クロラの函南はそれまでの作品での草薙で間違いないでしょう。スカイ・イクリプスのいくつかの短編が明らかにそう言っていると思う。

 

世界観そのものが素晴らしい

上記のブログのように、作中の謎を追うのももちろんこの作品の大きな楽しみですが、スカイ・クロラシリーズはただただ読むだけでその雰囲気にのめりこむことが出来ます。

空の美しさの合間に挿入される、どこか異国のような地上の風景。ドライブインでミートパイとコーヒーを注文する主人公たち。

煙草をふかしながら自分の思考を整理しようと努める子どもたち、大人たち。余談だけれど、かつて僕が煙草に手を出したきっかけの一つはこの小説だと思う。あとはデヴィッド・ボウイとパルプフィクション。

魅力的な登場人物たちの中でも特に僕が好きなキャラクターは、笹倉とトキノ。この二人はどちらも、悲壮な物語の中にあって、自分の生き方を全うしている男です。

キルドレではなく、普通の大人として地上の世界で生きる、凄腕のメカニックである笹倉。キルドレでありながら、自分の存在理由に迷うことは少なく、飄々としてどこか達観しているトキノ。

彼らのように生きたいなあ。

 

 _____________

 

以上、まとまらないけれどスカイ・クロラシリーズについての思い入れを吐き出しました。

最後に第一作、スカイ・クロラでの函南とクサナギミズキの会話を引用したい。初対面の人とはこういう挨拶をしたいですね笑

 

『よろしく、ユーヒチ君』

『うん、よろしく』

『何を、よろしくなの?』

『君がさきに言ったんだよ』

『私のよろしくは、お友達になって、お話をするっていう意味』

『僕も、だいたいそれ』