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二輪と深夜とロックンロール

ジャズとロックとバイクと喫茶店とそれらが出てくる本が好きです。元『東京文系大学生』。

昔々あるところにモバゲータウンとオレンジレンジがあった。

雑文

昔々、人々は平和に暮らし、不景気の最中でも携帯電話の発明と普及の目覚ましさを享受していた。

そこにいた10代の少年は、モバゲータウンという紳士淑女交流斡旋所に登録し、端正なアバターを作った。曰く、直メOK。曰く、即会い可能。魔法の言葉をプロフィールに並べた彼は、ドコモFOMA機種を握りしめながら来るべきメッセージを想像していた。

 

ある日彼はパスネットを使い電車に乗っていた。暇を持て余した彼はオレンジレンジをアイポッドミニで聴く。あ、嗚呼、なんかいい感じ。青空。海。どうだろうこのロケーションは。穴へエスコートってなんだろう。よくわからないけれどエロい。

携帯を開くと、友人からのメールが溜まっている。Re,Re,Re,…これはReを稼ぐごとにポイントが貯まるシステム。彼は現在125439ポイントを獲得していた。

いちご100%という書物を聖書とする宗教に入っていた彼であるが、同作者はその後新作を書いては集英社によって数ヶ月ごとにギロチンに処され、宗教は結束力を失っていた。

 

そうして過ごす日々であったが、東西南北のヒロインのうち南が好きだった彼は世の不条理をよく理解していた。モバゲータウン。イケメンアバターが直メOKと言っているのに声をかけてこない女ども。こいつらは何もわかっていない。ここではダメだ。そう考えた彼はミクシィという違法会員制クラブに入会した。ここは会員からの招待でなければ見ることすらできない、まさに闇に包まれた組織であった。

ミクシィでは、足跡と呼ばれる技術を利用して人々の移動が監視されていた。しかし彼はその重大さを知らず、ギャルい女の子を探してはアクセス。エロい女の子を探してはアクセス。1日200件をノルマとして日記にコメント。マイミク申請。しかしここでも実を結ばぬ彼は、心の底から絶望した。

そして彼は長く眠ろうと決めた。

 

夢のなかで、モバゲータウン、ミクシィはいずれもかつてのヒリヒリとした側面を捨て、ゲーム会社と化していた。そこは未来の世界。青い小鳥が人々の脳裏に住み着いている。携帯電話は退化し、ワンタッチでクールに開閉していた当時を知る人間は目を背けたくなるほどダサい板となった。

彼はブリーチがまだ連載されていることを知る。しかしなんら変わり映えしていない。さらに驚いたことに、ハンターハンターは数えるほどしか回を重ねていなかった。

 

バカバカしい夢にも飽きた彼は、再び現実の世界に戻る。携帯電話はパカパカと軽快な音を立ててリズムを刻みながら、彼のミクシィ巡りを支える。オレンジレンジは『*』という肛門としか読めない曲を発表した。

 

数カ月後、足跡を残しすぎた彼は当局により冷凍される。タイマーは2016年にセットされていた。