二輪と深夜とロックンロール

ジャズとロックとバイクと喫茶店とそれらが出てくる本が好きです。元『東京文系大学生』。

夏の深夜に読みたくなる、おすすめのエッセイたち

エッセイというのは不思議な文芸ジャンルで、書いてあることは日常の他愛無い話であることが多いけれど、そこにエッセイストそれぞれの嗜好や世界がありありと浮かび上がっています。エッセイストには他に本職を持つ人が多く(小説家、音楽家…)、その仕事にかける情熱や裏話が垣間見えるのも楽しい。
僕は歌人穂村弘のエッセイを浪人時代に読みふけり、このジャンルを好きになりました。それまで色々こじらせて海外小説や固い古典思想書なんかを読んでいた僕ですが、穂村を読んで「読書、楽しい…」と思うに至りました。めでたい。
 
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世界音痴 / 穂村弘

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

 

  穂村のエッセイは全部良いです。間違いない。浪人時代、目を輝かせながら一冊一冊集めていきました。ということで全部読んで欲しいのですが、とりあえず僕が最初に読んでハマった世界音痴をここでは載せておきます。

世界に対して不自然に動作してしまう穂村、素直になれない穂村、女性が怖い穂村…ファンは穂村のこれらの愛らしい不器用さに共感しながら読んでいきます。

ただし、著作を粗方読むと見えてくることが有ります。それは、こうした穂村像はあくまでキャラクターであり、実際の穂村はそこそこ自分に自信があり、なかなか女性にモテる、キラキラ輝くインテリ歌人だ、ということ。その二面性を愛してこそ、穂村弘ファンでしょう。

 

文福茶釜 / 細野晴臣

細野晴臣 分福茶釜 (平凡社ライブラリー)

細野晴臣 分福茶釜 (平凡社ライブラリー)

 

  誰もが知るところのYMOリーダー、細野晴臣。結構頻繁にエッセイを出しています。この本のなかでは、細野晴臣の音楽的価値観のみならず、微笑ましい昔の思い出話であったり苦労話、人生に対する姿勢などがビッシリ詰まっています。HOSONOVAあたりのソロ作を聴きながらゆっくり読みたい一冊。はっぴいえんど、ティンパン系の筆頭、そしてYMO、こんなレジェンドも一人の人間なんだなあと思える本です。

ちなみに僕が衝撃を受けたのは、飲尿健康法云々の下りです。ジョジョ6部のケンゾーかよ。やはりYMOでまともな人間は幸宏さんだけなのか…笑

 

自由をつくる 自在に生きる / 森博嗣

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

 
「全てがFになる」でお馴染みの推理シリーズや、スカイ・クロラシリーズの作者である森博嗣。某N大学に務めていたバリバリの工学系教員でもあります。そんな彼が書いたこのエッセイ集。
なんといっても、タイトルが恥ずかしい。カバー無しでは持ち歩けません。「へえ、自由をつくり、自在に生きたいんだあ」などど思われようものなら、その場で膝から崩れ落ちスンスンと涙してしまうに違いありません。
実際にタイトルどおりの教えが詰まった内容。囚われるな、という姿勢は学者・作家両面に通じるものなのでしょう。スカイ・クロラシリーズをアホみたいに読みまくった僕としては、森博嗣が意外にも現実派であり、執筆はあくまで生活のため、金のため、というドライな態度に少なからず驚きました。

 

音楽談義 / 保坂和志湯浅学 

音楽談義 Music Conversations (ele-king books)

音楽談義 Music Conversations (ele-king books)

 

 70 年代に青春を過ごすことに憧れる僕にとっては宝のような本。音楽好きな中年2人が、ダラダラペラペラとマニアックな音楽談義をひたすら進めていく。2人は 幅広く音楽を愛していて、多彩なジャンルについて話題は移っていきますが、底にあるのは60年代音楽シーン、ディラン、ビートルズストーンズ、マイルス…らのカルチャー。

いいなあ。60年代に幼少期、70年代に20代を過ごしたかったなあ。そんで60手前になって、吉祥寺の焼き鳥屋かなんかで顔赤くしながら音楽談義したかったなあ。

実際どうなんだろう。伝説としての東京事変、革命としてのロバート・グラスパー、そんな話をしているんだろうか。

 

やがて哀しき外国語 / 村上春樹

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

 

 村上春樹はエッセイも数多くだしており、いずれも高い人気を誇っています。おそらくいちばん話題に上がるのは「村上ラヂオ」だと思いますが、ここでは敢えてこの本を。

こ れは、村上春樹が一時期プリンストンで生活し、大学の客員教授を務めていた頃の生活のアレコレ話を集めた本。とはいっても、彼の聡明な頭脳と分析眼、冴え 渡る文章力によって、冷戦の影響が色濃い当時を鮮やかに記録した社会派エッセイとも読めます。もちろん、マラソンや音楽についてののんびりした話も。

ちなみに僕はこの本を携えてこの夏プリンストンへ行きます。