早起きし、亀有でファミリア見てきた。
この国にはっきりと存在しているのに見過ごされている外国人コミュニティを描いてくれそうで、しかも役所広司で、結構期待して見に行った。
が、結果としては役所広司のパワーでなんとか1本筋にまとまっているように見える(要所要所では結構ボロ泣きもする)が、①いろいろ詰め込みすぎ で、 ②キャラクターの造形と物語展開が「邦画」の悪いパターン だった。
①について。
アルジェリア紛争孤児を家族に迎える話と、保見団地のブラジルコミュニティの問題と、半ぐれとヤクザ、アフリカでのテロと、大変豪華なフルコースであった。
全てをリンクさせようという努力を感じたが、あまりに役所広司のキャパオーバー感があり、見ている側も2時間が長く感じるほど線がぶれていた。
ブラジルコミュニティの扱いは必然的に雑。結局彼らの描かれ方は、ドラッグをやり、ラップをやり、金を盗み、、という感じ。そうではなくて、もっと彼らの人権に寄り添った描写をしてほしかった。そうでなくとも誤解を招きやすいトピックなのに、これじゃ結局「ガイジンは犯罪率が高い」と思われて終わりなのでは?
身の回りにいる、不安定なアイデンティティと将来設計の中で、なんとか働いている外国人のことを考えてほしい。
外国ルーツの苦悩は、圧倒的にOMSBのアルバムを通して聴くほうが豊かに示唆に富んでいた。
②。MIYAVIと吉沢亮にもちろん罪はないが、前者は東京リベンジャーズ、後者はそのへんのテレビドラマにでも落っこちてそうなほど現実離れしたキャラクターで、まったく真剣に向き合う気にならなかった。
MIYAVIくん、娘の水筒を手放さず、殺人現場で子守唄を歌ってる、とか、ちょっと無いですね。終盤の雄たけびは演技というよりいつものシャウトで笑った。
吉沢亮くん、きみは、こういう映画に出てきたならばその偽善性と闘う宿命です、、、。ブラジル人の少年に対して「夢を持て」と説教するような人が、ただの純潔なヒーローとしてのみ扱われるのは猛烈な違和感。
松重豊のヤクザもさすがに、、。半グレにへこへこするヤクザ、という描写はもしかして孤狼の血とか見て勉強したんですか?というくらいリアリティ無し。
あとワインの瓶で人の頭叩くような真似こそ今のヤクザには似合わないし、瓶はあんなに綺麗に割れません。
半グレ関係全般要らないですね。あとテロ関係。そして吉沢亮の出番は極力減らして、役所広司がアルジェリアとブラジルという2つの「外国人」とどう家族になっていくか、という話にフォーカスしてほしかった。
オチについて。ネタバレ注意。
MIYAVIは逮捕され、救われたブラジルの少年少女が焼き物を継いでくれそうなエンド。
これでは何も解決していない。MIYAVIがいなくなったところで、ブラジル人たちの先の見えなさは変わらない。焼き物は食えないって役所広司も言ってたのに、それで彼らはどう生きていくんだ。
外国人労働力に対する国の制度は?県警は何してる?入管の問題は?
なにもかもが現実とずれていて、半端な社会派風アクション映画になってしまっていたのが非常に残念。
が、とにかく役所広司の姿が拝めるだけでも見る価値はある。