プールでバテたら、お婆ちゃんに「もうおしまいかしら?」と言われた。
きょうは土曜日、午後に仕事のため午前から泳ぎに行った。
子どもたちのレッスンであふれかえり、初心者レーンと歩行レーンが1つずつ開放されているだけだった。
体調も悪いのでゆっくり軽く泳げばいいやと思い、初心者レーンでちんたら700mだけクロールで泳いだ。
このレーンには背泳ぎお婆ちゃんとクロールお婆ちゃんとバタ足お爺ちゃんがおり、おれも含めた4人で距離を調整しながらシェアしていた形である
すぐにおばあちゃんたちには追いつくので、譲ってもらうこともしばしば。おれも休憩多めにとり、案外いいペースで泳いだらだいぶ疲れてきたので、「この体調ではこのくらいが限界だ」と思い、歩行レーンへ移動した
するとクロールお婆ちゃんも同時に歩行レーンに来たのだ
おれは両手両足を大きく開き、ダウンとストレッチを兼ねてぐんぐん歩く。お婆ちゃんはゆっくりだ。
おれが向こう岸に着き、折り返す。途中でクロールお婆ちゃんとすれ違う。
その時に、彼女は「もうおしまいかしら?」と言った。
強敵だ。このお婆ちゃん、おれを試していたのか。
おれがたった20分くらいでバテていることもお見通しというわけだ
「はい、きょうはこのくらいで」と何とか余裕を見せて絞り出すと、
「もっとたくさんやっちゃいなさいよ」
と言われた。
衝撃だ。
クロールお婆ちゃんにはかなわない。
スピードこそおれのほうが上だろうが、このプールに集っている高齢者たちは尋常ではないスタミナを持っている。
その彼女に煽られたら、返す言葉もない。
指で ニューホライゾンの先生がやる "a little"のジェスチャーをしながら
「きょうは軽くでやめときます。ぼく体力無くて」と返すと、
「そう、頑張ってね」と優雅におれの後方へ歩き去っていった。
もちろん、実際には「わたしはもう終わりにするから、その分空くわよ。こっからガンガン遠慮せず泳いでちょうだい」というニュアンスだったのだろう。そうでなければ、本当に強敵だったのかもしれない。
いずれにせよ、おれはなんだか神様に激励されたような不思議な気持ちで残り15mくらいを歩き、改めてストレッチをしてシャワーを浴びたのであった