きょうは上野で焼肉を食べた。
おれ(ともう一人の同僚)のミニ送別会であり、花束をいただいたりなどした。
そんで、さっき帰りの山手線に乗ったら、大学生くらいの若者がふらふらと立っていた。が、ふらふらしすぎてiPhoneを床に落としていたので「ヤバそうだなー」と思っていた。
日暮里あたりから若者は座り込み始め、
駒込の頃には意識もなくなったようで、ドアにもたれかかって座り、完全に寝ていた。
「ドア開いたらあぶないなー」と思ったが、周りの人もじろじろ見るばかりだし、座っている人も席を譲ろうとしない。
でもこのままだと何があるかわからんし、少なくとも目の前のiPhoneは盗まれるだろうなと思った。声をかけようと思ったがタイミングが見つからなかった。
大塚駅。
いよいよ座ってもいられなくなり、床にうつぶせで寝始めた。スマホも荷物もかばんからぶちまけられていたので、「こりゃだめだー」と思い、荷物を集めてカバンに入れ、肩をたたいて起こそうとした。
だが起きない。
おれが声掛けを始めると、すぐ近くでずっと様子を見ていた女性も声をかけ始めた。あまりに起きないのでその方はほっぺたをぺちぺちやったりもしていた。
おれがそこまでやったらハラスメントで捕まるかもなあと思ってもいたので、これは助かった。
池袋駅。
おれも降りる駅だが、やっと近くの席が空いたのでとりあえず起こして座らせようとする。が、起きない。
いつの間にかほかの人も集まっており、おれに向かって「なにか手伝いましょうか」と言ったり、振り返るとホームに半身乗り出して駅員に手を振っている人もいた。
誰かが動くとみんな動くんだなーと妙に冷静に思った。
そうこうしてるうちに池袋駅を出てしまったが、女性の努力もあって若者は目を覚ました。
女性が「起きられますか」「どこで降りるんですか」と聞くと「新宿…」と言っていた。
目白駅を出て少したった頃、とりあえず手を貸しつつ座らせることに成功した。
若者はこちらを見て妙にピュアに微笑んだ。状況が分かっていないのだろうと思った。
高田馬場。
手伝ってくれた女性が降りた。目があったので会釈だけした。
若者を見ると誰かに電話しているようで、意識はそこそこ戻ったようだった。
おれもそろそろ引き返すか、と思って新大久保で降りた。
驚いたことに、新大久保駅の通路ではまた別の若者がぶっ倒れていた。
途中まで介抱したとみられるおばあちゃんが「急性アルコール中毒!」と叫んでいたので心配になって近づいたが、ぼんやりと意識はあるようだったし、駅員たちもすぐ集まってきた。
これなら大丈夫かな、と思い、水だけ買って渡し、池袋方面の山手線に乗り直した。
ふう、と思い、通知が溜まっていた送別会をしてくれたメンバーとのグループラインを開くと
と書いてあった。
優しい心ね。
というか、数年前まで自分はよく路上でぶっ倒れていたわけで、他人事とは思えなかっただけではある。
善行をしたという気持ちも無くはないかもしれないが、優しい顔して「手伝いましょうか?」と言ってきたほかの人たちになんかイライラしているほうが大きい。
これはきょうおれが体調不良で頭痛がしていることの影響もありそうだ
若者たちがこぞって酔いつぶれる3月後半。われわれ30歳も負けてはいられないが、
たぶんおれはもう人生で二度と人前で床や地面に寝転んだりしないのだろうとなぜか確信したのであった